小説
迅嵐
「だめ、だめだ、迅」
「…何がだめなんだよ」
「それだけは…頼む…」
「いいや、おれはやるよ」
「ああっ…迅……!終わらせないでくれ……!」
ガラガラガラガラガシャーーーーン!!
大きな音を立ててジェンガが倒れる。今現在、俺たちは嵐山隊の隊室でジェンガをしている。
「ほら終わり。今帰れば仲直り出来るって。おれのサイドエフェクトがそう言ってる」
「うぅ〜〜…でも……」
大の男が二人、ジェンガをするという意味不明なシチュエーションを作ったのは俺だった。何故なら朝に愛すべき弟妹と喧嘩をしてきたから。喧嘩なんて何年ぶりだろう。下手をするとしたことがない可能性もある。だから仲直りの仕方が分からず途方に暮れていたのだった。都合良く隊室にあったジェンガを、通りかかった迅を道ずれに遊び倒し早数時間。正直帰りたくない。
「てかここまでジェンガ付き合っといて何だけど、喧嘩の理由って何だよ。おまえ達が喧嘩してるの想像出来ないんだけど」
「…副と佐補が最近夜帰ってくるのが遅くて、心配で口出したら喧嘩になった」
「えぇ……」
迅は眉を下げ、くだらないと言いたげに声を出す。しかし俺にとっては重大なことだ。部活動で忙しいのか二人の帰りが遅いことが心配で仕方がない。それを言うと二人は「もう中学生なのに!」と口をとがらせた。それに反論、それまた反論と続けるうちに喧嘩になってしまったのだった。
「二人が誘拐犯になんて攫われたら俺は三門市を滅ぼしかねない」
「ガチでやりそうなのがおまえだよね」
軽口を叩いている間に、着々と帰りの準備が整う。
「ほらー、帰るよー。おれも途中まで一緒に行ってあげるからさー」
「嫌だ!俺のことは置いていけ!屍を越えろ!!」
「はいはーい、帰りますよー」
ズルズルと引きずられ、俺は隊室を後にせざるを得なかった。
ちなみに喧嘩は、副と佐補の可愛い顔を見た瞬間謝罪マシンガンを放った俺により無事収束したのだった。
11/28/2024, 10:35:58 AM