涙の理由
年末の日曜日。自宅で一人、テレビに張り付いていた。画面の向こうでは二人組がマイクの前で喋っている。時折、観客から笑い声が溢れる。
今頃、あいつらも集まってるのかな。
一緒にエムワンを観ようぜと誘われたのが数日前の話。酒を飲みながらワイワイやるから来いと言われた。楽しいのは間違いないイベントだったけれど、僕は断った。予定があるからとありきたりな嘘をついた。
いよいよ決勝が始まった。僕はペットボトルのお茶を片手に楽しんだ。どの組も面白かった。いつ観ても漫才は文学でもあると思う。たった四分で人を笑わせるために言葉を尽くす。詩や短歌に通じるものがある。
優勝者は観ていればわかった。どれだけ他の組が面白くても、その評価は残酷なほどに揺るがなかった。だからせめて全力で楽しんだ。心から面白いと思い、心から笑った。笑えば笑うほど涙が出た。番組が終わった後、顔を洗った。涙は流れても、緊張と期待を押し隠して戦った人たちはしっかりと記憶に残った。
結局、今年も泣いちゃったな。
一人苦笑する。毎年こうだ。笑いながら泣いてしまう。友達の誘いに乗らなかったのは、涙の理由を聞かれたくないからだ。
いいんだ。まだ泣ける。泣けるなら、まだ戦える。
来年の決意を新たに、僕は深く息を吸った。
10/10/2024, 2:32:49 PM