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 最近は「さよなら」というフレーズをあまり使わなくなった。
 バイバイ。また今度。失礼します。
 それは、さよならという言葉が、別れを強調するからかもしれない。
 
 昏睡状態の知人のお見舞いに行ったとき、おいとまの際に口をついて出たのが「さようなら」だった。
 普段ほとんど使わない言葉で別れの挨拶をしたことに自分でも驚いたが、どこかでこれが最後だと予期していて、実際その通りになった。

 あの時、私の別れの言葉は横たわる本人の耳には届いていただろうか。
 しばらくは、なぜ言ったのだろうと悔やんだ。
 さよならを言えてよかったと思えるようになったのは最近になってからだ。


『さよならは言わないで』

12/3/2023, 12:41:35 PM