信号機

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部屋の隅にあったオンボロの玩具の話

俺が言葉を知った時ぐらいの頃
俺はバカ正直な奴だったから
何でもかんでもわがままを言ってた。
本当に些細な事でもなんでも言って、
すぐに「お願い」って言ってた。
だから直ぐに周りのヤツを困らせた。

ある日、俺の師はこう俺に告げたんだ。
「あなたは長所は誠実なところだけど
誠実すぎて、我慢を知っていない。
いつか、我慢してみて」
その時は俺には何にも響かなかった。

そっから3年くらいの話。
祖母に
「何か一つ買ってあげよう」
と言われ、
「思いつかないよ」
と答えた。
祖母は
「あの玩具屋に行ってみない?」
祖母が向いた方向にあったのは
木製のそこら辺にあるような家の玩具屋
あまり期待はしていなかったが
商品を見るなり
俺は目を輝かやかせた。
そこらにあった玩具は
本当に興味深いものばかりで
どれもこれも喉から手が出るほど
欲しいものだった。
祖母は
「決まったかい?」
と微笑んで言うと
「どれもこれも欲しい」
と答えようと思ったその時、
何故かその言葉を無意識に飲み込んだ。
あの言葉を思い出したのだ。

俺は祖母にこういった
「欲しいものなんてないよ。
さっさとお家に帰ろ。」
祖母は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をして
「おや、どうしたんだい。
我慢するなんて、珍しいじゃないか。」
と言った
俺は
「先生に我慢してみてって言われたんだ
だから、我慢したんだ」
祖母は笑って
「ははは、偉いねぇ。
でもね、甘えてもいい時もある。
無理に我慢しなくてもいい。
程々に我慢してみなさい」
俺は
「分かったよばあちゃん」
と告げた。
俺はどれも欲しかったが、
1つだけと決めて
変に動く絶妙に煩い玩具を選んだ。
なんとなく、憧れたんだ。
祖母とそれを買って帰った道は
ふと、未開の道に感じた。

4/1/2024, 1:43:05 PM