潮風に乗って波の歌声が聞こえる。港町で産まれ、育った私にとっては随分と聞きなれた音だ。
ちゃぷ、素足を波に入れて手に持っていた手紙を開いて読む。
「ばーか」
くしゃりと手紙を握りしめる。
「なにが、幸せになってね、だ。そんなに辛かったなら、私に相談してくれたら良かったのに…っ」
涙の跡が残る手紙。彼の、遺書。いじめられていただなんて知らなかった、そんなの、気づかなかった。誰よりもそばにいたのに、誰よりも彼を愛していたのに。
「こんな世界、だいっきらい」
君が愛した世界だとしても、君を苦しめて殺した世界なんて、無くなってしまえばいい。
「一緒に苦しみたかったな…」
ごぼりと真っ青な視界に空気の泡が浮かんだ。
【題:手紙を開くと】
5/5/2025, 1:30:15 PM