水上

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長い通路。気紛れな間隔で並ぶ、大きさも形も様々な窓。
ここは、マドノムコウミュージアム。ぼくはここが好きだ。何を考えるでなくぼんやりと、この長い通路を片側ずつを眺めて歩く時間が好きだ。ゆったりと、何に急かされるでもなく。じっくりと、何をためされるでもなく。好きに歩いて、好きに思う。考え事が好きな性質と、とても相性のいい場所だ。

「雨の日の図書館の窓」

タイトルのプレートには、その窓のコンセプトが記してある。窓の近くには椅子がある。弧を描くように並ぶ五つの椅子。同じデザイン、同じ大きさ。見てほしいのは窓だから、こっちは統一しているらしい。窓の向こうを眺める時は、景色を塞がないように、椅子に座るのがここのルール。

僕は窓の一番近くの椅子が好きだ。窓辺に寄り添うように座って、斜めに外の景色を眺める。正面の椅子に誰かが座ると、目が合いそうで少し気まずいのが難点。

窓の真正面に置かれた椅子にも時々座る。あっちはまるで窓が額縁で、外の景色が絵画か映画みたい。

一つ一つの窓辺を味わうと、一日いても足りないくらい。朝のまばゆさも、昼の鮮やかさも、夕暮れの儚さも、夜の味わいも。そのどれもが筆舌に尽くしがたい。

言葉にならない思いが体中を巡って、心に募っていく。それを大切に閉じ込めるように、ぼくはゆっくりと目を閉じる。


〉窓越しに見えるのは

7/2/2022, 1:44:04 AM