卵を割らなければ

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時間よ止まれ

じ 事故なのだ

か 彼は盲目であるのに
  付き人も付けず
  ひとり寝台列車に乗っていた

ん 「んー、何時だろう」
  彼は寝台から起き上がる

よ 酔っていたのだ
  彼には寝酒をする
  習慣があったから

と トイレと間違えて
  外に通じるドアを
  開けたのに違いない

ま まっさかさまに落ちて――
  地面に叩きつけられる

れ 列車は彼の転落に気付くことなく
  無情にも走り去ってゆく


内田百閒「東海道刈谷駅」へのオマージュです。
宮城道雄を悼んで。

2/16/2025, 11:29:11 AM