ささやかながらプレゼントを用意しました。
あなたがそう言うので黙って受け取り箱を開ける。
レジンで作られた小さな指輪。濃紺の宇宙に黄金の星たちがまたたいている。
右手の中指にそっとはめる。体のなかに清涼な空気が吹き込まれた気分だ。
指輪からあなたに視線をうつすと、あなたはもうこちらを見ていない。途中まで書き進めた図案を睨みつけながら考え込んでいる。あなたの世界にはもう私も星々も存在しない。
これは、これまでずっと繰り返されてきたこと。
わたしは再び指輪に目をやり、しばらくしてから指輪をはずす。
机に置き、あなたを見る。
あなたは相変わらず図案に夢中だ。わたしはそっと部屋を出る。
ここまでは同じ。これまでずっと繰り返されてきた日々。
でも今日わたしはここを出て二度と戻らない。
あなたにも指輪にも支配されない一歩を踏み出すために。
7/13/2024, 2:58:24 AM