三文小説

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二人だけの秘密

秘密とは、人目に晒されないからこそ蠱惑的なのであり、秘密を秘密たらしめているのであろう。ひけらかしたり、暴かれたりした瞬間、秘密とは空気に晒された金属のように酸化が始まり、特有の輝きを失う。

秘密基地は、秘密だからこそ少年少女の心を躍らせるのである。逢瀬とは、秘密だからこそ背徳的で、趣が宿るのである。

ミロのヴィーナスは腕が欠損しているからこそ、独特な美しさを醸し出しているのではないか。ミロのヴィーナスの本来の姿を見てみたいと思う気持ちはある反面、本来の姿を取り戻した刹那、ヴィーナス像は他の彫刻となんら変わらないものへと変容してしまい、きっと興醒めしてしまうだろうという恐ろしさも感じる。

また、風姿花伝で説かれている"秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず"という言葉は、秘密や美しさの真髄を的確に突いていると私は思う。秘密があるからこそこの世は色づくのではないか。

誰かを貶める企みでない限り、秘密とは詮索しないほうが粋というものなのではないか。

5/3/2026, 1:46:31 PM