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ごく一部の人を最悪な気分にする話をしましょう。特にある漫画とアニメ作品のファンの方は大層嫌な気持ちで、今後その作品と向き合うことになるかもしれません。

私は一人旅も、一人でどこかへ泊まることもしたことがありません。
親が厳しかったからでも、生活が困窮していたわけでも、興味がなかったからでもありません。
10歳前後から複数回の性犯罪被害にあっていたためです。

ここで、読むのをやめようかなと思った方には、小さな想像力でも理解出来る、誰にでも当てはまる例えをご提供いたしましょう。
強盗の被害にあい、多額の金品を失ったけれど幸いにも軽傷で済んだあなたは、警察に連絡をします。今すぐに向かうと言われ安心したのもつかの間、到着した警察官はこう言うのです。
「この家はいけませんね!これでは強盗を呼び寄せているようなものですよ!」
もちろんあなたはこう答えます。
「なにがいけないのですか?」
ごく普通の慎ましいワンルームアパート。狭いながらも、苦楽を共にした我が家です。
「まず第一に、カーテンがついています!これはいけません。しかも窓にあったサイズです。こちらを買える財力があると見せびらかしている!」
「これはそう高価なカーテンではありませんが……」
いけません、全く駄目ですよと警察官は呆れたように笑います。
「キレイにしていらっしゃるのも良くありません。お洋服も破れても汚れてもいませんね。大変危険です。それに、手に持っているのはスマートフォンですよね?そんな高価なものを隠しもせず!気をつけてくださいね」
「今の時代にスマートフォンを持っていない社会人はほとんどいませんよ」
「いないということはありません、そういうことです」
これ以上は無駄だと言うように、警察官は手で話を遮ります。
「被害届けなどはどうしたらいいのでしょう?」
「はあ、出したいのであればどうぞ。報復などもありますからオススメはできませんよ」
そうして納得のいかない気持ちで被害届を出したあなたは、報復を恐れて引越しを決意しました。努力も虚しく、あなたはその後何回も空き巣や強盗に見舞われることになりますが……。
そうそう、友人に相談したら「強盗にある金があるという自慢か?!」と言われます。上司には「これからは気を付けて暮らしていきなさい」と無駄な助言を頂くことでしょう。

話を戻します。
それらのことを納得して、命よりも優先すべきことはないと自分を言い聞かせて生きてきました。SNSなどで一人旅の投稿を見るたびに羨ましい気持ちになりますが、個人の選択です。強盗にあったものが、その後強盗を警戒せず生きることは出来ませんが、優先順位は個人によって違いますから。もしかしたら、苦しみを乗り越えて旅行を楽しんでいらっしゃるのかもしれません。
ただ、ここ何年もずっと引っかかっている作品があるのです。具体名は控えますが、女の子がキャンプをするという内容の作品です。オシャレを楽しむ可愛らしい女性が、怯えることも憂うことも、邪魔をされることもなくキャンプを楽しむ姿は眩しく、素敵だなと思います。
ですが、その作品が男性に人気だと知り、少し苦しくなりました。
ほとんどのファンは、一般的に女性のキャンプにどのような危険が付き纏うのか、それがどれ程の恐怖かを知らないばかりか考えたこともないでしょう。武器を持っても、歳を重ねても、恐怖は完全に消えることは無いと理解できないでしょう。
それは非難されるようなことではなく、作品がそのような観点で作られていないので当たり前です。
その当たり前が苦しい。現実の女性の中に少なからず存在する「キャンプを楽しみたいが、恐怖ゆえに諦めている」人たちを無視しながら、彼らはかわいらしい女性キャラクターを愛しているのです。聖地巡礼と称して一人旅を楽しむこともあるでしょう。
ニュースに、被害の訴えに、目を背けたまま。

6/6/2024, 7:07:24 PM