「ドタキャンから紅葉狩り」
仮病なんてしないで、一緒に行けば良かった。
せっかく誘ってくれたのに。
ふたりきりではないことが面白くなくてドタキャンするなんて、最低だ。
幼い頃のように、自分の気持ちを素直に言えたら──
どうしていつもこうなっちゃうんだろう。
寝転がったまま出来ることは限られている。
意を決して起き上がり、カーテンを閉めた。
ついでに毛布を引き寄せ、ベッドに横になる。
カーテンの隙間から差し込んでくる光。
じりじりと照りつけていた夏の太陽は嫌だったけど、今はこれくらいがちょうどいい。
あいつに友達が多いのは昔から変わらない。
あいつの女友達に『そういう気持ち』が無いであろうことはわかりきっている。
それなのに、嫉妬心を抱いてしまう。
素直になれないのも、今日に始まったことではない。
それでも、あいつは私のことを大切にしようとしてくれている。
ずっと私の側にいてくれようとしていることも、わかってる。
起き上がり、カーテンを開ける。
すっきりと澄んだ青い空に、ぽこぽことした鱗雲が広がっている。
窓を開けてみると、少しひんやりとした風。
金木犀の香りと、どこかの家で薪ストーブを焚いている匂い。
季節は容赦なく冬へと向かっている。
「いつまでも甘えてたらダメだよね……」
このままでは愛想を尽かされてしまう。
それだけは嫌。
そうだ、埋め合わせとして紅葉狩りに誘おう。
子供の頃、一緒に行ったあの場所なら、あの頃のように振る舞えるかもしれない。
────やわらかな光
10/17/2024, 1:15:42 AM