お題 日常
「兄貴が!?」
俺のスマホに突然電話がかかってきた。病院からだ。
何事かと思ったら兄貴が病院へ担ぎ込まれたというという。
なんでも俺たちの住んでいるアパートの階段から足を滑らせて落ちたという。
自力で救急車を呼んでいたようだが、頭を打っているということで総合病院へと運ばれたとのことだ。
取るものもとりあえず、兄貴がいるという病院に行く。
「どうした?」
兄貴は自分事だというのに、まるで他人事のように、見舞いに来た俺にそう言った。
「いや、どうしたも何も」
しかし、頭は大事がなかったものの、階段から落ちて骨にヒビが入ったそうで、顔をしかめている。
そんな兄貴を見て、俺はどう反応していいのか分からなかった。多少の傷なら平気な兄貴の顔を見て、動揺している。
階段があがれないであろうと診断された兄貴は、大事をとって入院した。
そして翌日。
俺は朝からお見舞いに来ていた。
なんだかんだで気にかかるのだ。
「兄貴、足は痛くないか?」
俺は、何事もなさそうな顔をしている兄貴を覗き込む。
「いやそれが」
ギプスでガッチリ固められた右足首を見ながら、兄貴は言いにくそうに俺に向かって言った。
「それが、全く痛くない」
……えっ? マジ!?
俺は絶句したが、兄貴は本当に平気な顔をしていた。
そしてあれから、3日後。
レントゲンを撮ったところ、ヒビも出血もどこにも見当たらず、触診をしても全く痛くないという回復力を見せた兄貴は、退院した。
何事もなくアパートの階段を登って、部屋に入ると流石に落ち着いたようだ。
「やはり油断は禁物だな」と呟いて、遠い目をしていた。
こうして俺たちは、穏やかであろう日常を過ごしている。
退院してすっかり元気になった兄貴が趣味と仕事に没頭しているのを見ながら、俺は課題に追われる日々を追っていた。
6/23/2023, 9:50:22 AM