《誰よりも、ずっと》
天は二物を与えずというけれど、僕はそれに懐疑的だった。
——僕には数多の才能があるからだ。
『本当に、凄いよ』
勉強はどの教科も誰よりもできる。
『将来が楽しみだな』
運動だって大の得意だ。
『足が速いんだなぁ』
手先は器用だし、細かい作業も好きだ。
『よくそんなに上手くできるな』
料理に洗濯、掃除など家事もこなせる。
『助かるよ』
誰かの為に動けることは嬉しい。
『ありがとうな』
初対面の人とでも楽しく話せる。
『困ったことは無いか、そうか』
学校では誰でも声を掛けてくれる。
『みんなと楽しめてるのか』
部活もバイトも勉強もできる。
『無理してないか』
いわゆる文武両道で、完全無欠の天才だ。
『お前は本当に、』
誰よりも、ずっと、僕は優秀だ。
『可哀想な子だ』
だから、父さんは僕が引っ張ってあげられる。
『こんな家に生まれなかったら、無理なんて……』
気にしないでいいと、そう言える。
『絶対にさせなかったのに』
だから、父さんは心配なんか要らないよ。
『ごめんな』
僕という天才に任せて、ね?
『病気なんてものに、父さんは負けたんだ』
それに僕は、誰よりも、ずっと、幸せなんだから。
『お前の幸せを、誰よりも、ずっと願っているよ』
4/9/2024, 1:38:58 PM