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1000年先もあなたと一緒にいられたら…

先輩が私の手をとってくれた日、今でも鮮明に覚えています。学校の文化祭。先輩と過ごすのはこれが最初で最後だったんです。学級ステージも私は主人公の男役を演じました。髪も刈り上げて男の子にしてもイケメンで適していたからなんです。本当は先輩に見て欲しかった…内緒ですけど。あっという間に日は暮れ、中夜祭が幕を開けた。フォークダンス。それは学年の壁を隔てて仲良くなろうという魂胆から生まれた最高の行事なのである。
曲が流れ、全校の輪が動き出す。私は、無我夢中でその時を待った。緊張している私の手をとってくれたのは…先輩でした。先輩の手は冷たかった。それでも私の手を握ってくれました。でもそんな時間は束の間。先輩はすぐに去っていってしまった。私は2度目が来ることはないけれど、その2度目を必死に願った。ラストの曲。諦めかけたその時、もう一度あの感覚が蘇った。せ、先輩!私は後悔したくなかった。先輩の手をギュッと握りその感覚を必死に覚えた。先輩は優しく私の手を握り返してくれた。あぁ、今の私のパートナーは先輩なんだ。もう先輩と片時たりとも離れたくはないのに…
左手を見つめる度に思い出すあの感覚。いつか、本当に先輩が私の手をとる日が来たら…私は1000年先も先輩を愛することを誓います。

金曜日だというのに、時間の流れがこんなにも遅く感じるなんて。不公平ではないか。それでも5時間目は終わったし、あと1時間で部活もある。そしてようやく帰れる。

「なぁ、あいつらうるさいんだけど」

と自分の席を指さしながら話すのは幼馴染くんだった。確かに男子だらけだ。

「黙れって言えばいいじゃん」

それから彼は自分の席に戻った。はずだった。

「いなくならないんだけど」

「知らないよ。じゃあ他の場所にいれば?」

勘違いされたくないし、学校では親しくするつもりはないのに…彼は私の席の隣にしゃがんだ。言葉にしないけど態度で(じゃあ俺、ここにいるわ)と訴えてくる。…なんだこの可愛い未知の生物は!?さっきの直感クイズで「重いものは男性に持たせる」という意見にNoで答えて「男子よりも圧倒的に強い女子もいるから」だって。完全に私のことをバカにしやがってというイラつきは消えてしまった。この甘え上手な幼馴染くんにいつか1000年先も…って伝える日が来るのかな?それでも私は先輩しか見えないのに…
…君の事、どうしても嫌いになれない

2/3/2023, 11:21:47 AM