藁と自戒

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大学2年生、成人を迎えた。
成人式、かつて慣れ親しんだ見慣れない土地にかつて顔を合わせた見知らぬ顔が並ぶ。寂寥は空間で、空気は懐古に満ちる。
「なー、わいわい、覚えとっか?」
「忘れるわけないさあ!○○だっぺ?」緊張と安堵が幾度と無く繰り返される亜空間。極限までに煮詰められた非日常の中に見える懐かしさがどこか擽ったい。
式は無難に進み、やがて終わる。かつて仰いだ師は最早一介の大人へと変わっており、自分も大人になったのだなと未熟ながらに思う。20と言う月日で初耳する公僕の祝辞を受け止め、咀嚼し、やはり飲みきれず会場に吐いて捨ててしまう。そんなこんなで式は終わる。
「なあ、みんな2次会いくさ?」
誰かが問う。
「なんか、○○さんが幹事しでくれるってさ」
誰かが返す。
成り行きで調子よく話は進み2次会の話が纏まってゆく。また、誰かが言う。
「2次会までに時間があるけ、小学校見に行からん?」
「おうよ、行こや」
二つ返事で何人かが小学校に足を運んだ。無論私もその1人なのだが。学校の様子はすっかり変わっており、古ぼけた校舎の外壁は塗り直され見慣れぬ色に、知らない建物が2つほど増えており、そこに建っているという事実からそれがかつて通っていた小学校だと断定せざる負えないという様子だった。
「あー、すっかりかわっちまってえ」
「わがめー、なー、あへじかしじあ、まだ授業中だべ」
「わー、めやぐね」
はしゃぐ成人の姿がそこにあった。この小学校には最早なんの意味も無い。かつて通った小学校に、かつて通った人が、かつて通った人と集まる。その行為に意味があるのだろう。どことなく懐かしくあった。校庭に目をやる。かつての滑り台、ジャングルジム、鉄棒、雲梯とひとつも残っていない。でも、そこで今の子供たちが元気にボールを追いかけている。ああ、君たちが走っている地面の遥か下に、かつての遊具たちはひっそりと埋まっているんだろう。
#ジャングルジム

9/23/2023, 10:34:05 PM