"遠い日のぬくもり"
ある夏の夜。
雨が降っていた、じめじめとしていて心地の良い夜とは言えなかった。
珍しく君の帰りが遅くって、連絡も来ないから心配になって傘を差して探しに行った。
傘は持って行ったはず、濡れて冷えてしまっていないかな
晩御飯が冷えてしまう
何か事件にでも巻き込まれてしまったの?
なんて色々考えながら傘に当たる雨音しか聞こえない街を彷徨っていると、やっと君を見つけた。
君は、人通りの少ない歩道で傘を投げ出して倒れていた
なりふり構わずに傘を捨て置いて、駆け寄る。
長い間雨に打たれて、体は冷え切っていた。
けれど、冷たいのはきっとそれだけのせいじゃない。
それから救急車を待つまでの時間。手を取って脈の確認をしていた。
あるけど、少ない気がする。
人工呼吸だとか心臓マッサージだとかの単語が頭の中に埋め尽くされる。
けれど素人の私が触れて壊してしまったら?
せめて温めるぐらいは。
私は傘を近くに置いて君に覆い被さった。
雨音が耳の中でこだましている
まるで、私を責め立てているような雨。
今まではずっと、私の方が冷たかったのに、
私は君の手を何度も何度も撫でて、願っていた。
12/25/2025, 1:39:46 AM