喜村

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 手を引かれて家路を辿った夕暮れ時。
 漫画とかでよく描かれるような、段ボールに入った子猫が電柱の横においてあった。
「あ! 猫だ!」
 私が母親の手を払いのけて、可愛い可愛いと子猫を見ていたが、だめ、とまた手を繋がれる。
「猫飼おうよ! この子!」
「だめよ、またいつかね」
 またいつか……いつかは飼ってくれるのだろうか?
 私はその言葉を信じて、その場を後にした。

 次の日は雨だった。
 昨日いたはずの電柱の側には、もう何もなかった。段ボールも跡形もなかった。
 またいつか……会えるかな?



【またいつか】

7/22/2025, 11:13:36 AM