乱雑無章

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16. 声が聞こえる

昨日から鈴虫が鳴いている。ついに夏は終わった。

秋自体は良いものだ。ただ、それに続いて冬がやってくるのは嫌だから、夏の終わりは少し寂しい。

春は夏に向かっているからいい。寒くなる兆しなどない。盛り上がっていくだけ。だから花粉症も許せる。一方秋は冬に向かっている。冬が来るのだ。

冬の寒さは体から熱を奪うだけでなく、生気とか意気のようなものを奪ってしまう。

それだけではない。朝布団から出るのが大変だし、脱衣所も冷え込むし、換気が億劫になるし、着込むから洗濯物は増えるのに乾きにくいし、それなのに空気は乾燥して鼻と喉が呼吸の度に痛むし、指先の感覚が遠退くし、筋肉が解れず怪我をしやすいし、寒いから楽器のチューニングが大変だし、頬や唇は切れる。

しかし、一番嫌なのは空の色とか、木々の淋しさとか、寒さを堪えるときのあの惨めな気持ちとか、そうやってのんびりさせてくれない所だ。厳しくて冷淡で突き放されているような疎外感。冬が怖い。

鈴虫は冬を連れてくる。だから時々秋まで嫌いになりかける。いい季節なのに。

9/23/2024, 7:09:37 AM