不知火

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 目が覚めると朝の五時だった。
 確か眠ったのは夕方六時だったはずだが。
 彼女はスマホを置き、枕に頭を投げ出した。眠気はまったく感じない。こんなに素晴らしい目覚めも久しぶりだ。
 部屋に射し込む朗らかな陽の光を不本意な気持ちで浴びる。すっかり時間を無駄にした。夕飯も食べそびれた。冷蔵庫の豆腐ハンバーグ、楽しみにしていたのに。お気に入りの猫動画を見ながら怠惰に過ごすはずの夜時間が台無しだ。
 不満を籠め、右に左にごろごろ転がる。
 過ぎたことは仕方がない。早めに起きられたのだから、朝の準備をゆったりこなすとしよう。紙風船のように軽い体でベッドから飛び出す。伸びをひとつ。スマホを拾い、待ち受けの黒猫を指で撫でた。
 おはようございます。

7/11/2023, 9:21:37 AM