いぐあな

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300字小説

時を越えた贈り物

 流行病に効く薬草を懐に魔の森を抜ける。
 これを飲めば病の妻が助かる。産まれてすぐ引き離された子を抱かせてやることが出来る。……しかし、やはり魔の森の魔物は強かった……思った以上に深手を負ったようだ……足が動かなくなり……目の前が暗くなる……頼む……誰か……この……薬草……を……俺の……大切なものに……。

 十年ぶりに流行病が村を襲った。僕の父は病の薬草を採りに魔の森に行って帰らず、その後、母は亡くなった。
 その病に幼馴染がかかった。周囲の反対を振り切り魔の森に向かう。
 森の入口に緑の繁みが。よく見ると薬草の葉だ。森の奥にしかないはずなのにどうして? いや、今はとにかく。
 僕はその葉を摘むと村へと走り出した。

お題「大切なもの」

4/2/2024, 12:26:22 PM