夜空の音

Open App

寂しくて

「俺の見られたくない部分を見るなよな。」
「教えてくれないと、わからないよ....。」
「教えてもいいけど、教えたらお前の前から俺は消える。」
「なんでそんなかたくななの?うちは、一緒に考えたいのに。一人で抱え込ませたくないだけやん!」
「だから!教えてもいいよ。いいけど、言ったらお前の前からもダチの前からも誰もの前から俺は静かに消えるけど、それでも聞きたいんか?っていってんの!わかる?」
運転席に座る男は、あからさまにイライラしていて、助手席に座る女は余裕を失いヒステリックになりかけていた。
「いなくならないでよ。話してよ!一緒に楽になれるのを考えようよ!」
女は必死に男に訴える。
「一人で考えるより、二人で考えた方がいろいろな考えかた....。」
「うるせぇな!言ったら消える!言わんかったら消えない!どっちかなの!わかる?」
必死に、彼の心の荷物を少しでも一緒に持ちたいという女の悲痛な願いは男の怒りの声で消し去られる。
女は押し黙ってしまい、車内には男の手元のタバコが鳴らすチリチリという音だけが虚しく響く。
「....私、そんなに信用出来ないの?」
女の潤んだ声はか細く、小さかった。
返事はない。
女はため息を吐きながら頬づえをついて窓の外を見た。
少し震えた息とともに、なんとか抑えていた涙が、一つ、また一つと頬と腕をつたう。

11/10/2025, 10:18:46 AM