手紙を開くと、そこにはカミソリが入っていた。
アイドルになって三年。
とうとうこんなのが送られてくるようになってしまったか。
最近、グループのメンバーと喧嘩した。
険悪なムードは今も続いている。
それぞれに味方がついて、今やグループは真っ二つだ。
喧嘩相手のファンは、俺にとってのアンチだろう。
きっと、俺が許せないに違いない。
マネージャーに相談した。
「え?カミソリレターってやつですか?まだあるんだ、そんなの」
「そーじゃなくてもメンバーとモメて落ち込んでんのに、ファンからもこんなのが送られてきたら、ほんとヘコむよな」
「で、カミソリはどんな状態で?」
「どんなって…確かジレットの…」
「いや、メーカーじゃなくて…ん?なんでメーカーまで分かるんですか?」
「なんでって、箱に書いてあるからさ」
「箱?箱に入ってたんですか?」
「そーだよ。まあ正確には、手紙じゃなくて封筒の中に入ってた。新品のケースだったな」
「それは…もしかして、T字カミソリ?」
「T字?あーそう、あれ、Tの形してるよね。そう呼ぶんだ。…ん?カミソリって他にもあんの?」
「…なるほど。最近、メンバーと喧嘩して落ち込んでるのは分かりますが、身だしなみ、おろそかになってませんか?無精髭でステージに立ったりしてませんか?」
「んー、まあ、処理が雑になってることは否めないかな」
「良かったですね。それはアンチの仕業じゃありませんよ。あなたのファンからの、思いやりってやつです。これを見習って、メンバーにも思いやりを持って接してみたらどーですか?もしかしたら、皆が今まで以上に輝き出すかもしれませんよ」
5/6/2025, 1:48:26 AM