二次創作 文豪ストレイドッグス
『仲間が死んだ現実が受け入れられず逃げてしまう夢主』(死ネタ注意)
探偵社の中が少しだけ広くなったような気がする。気の所為かな?
「太宰ー! この仕事太宰のでしょ? 私に押し付けないでよ」
太宰はソファーの上で横になっている。
「……」
「無視かい! ったく、貸し1ね」
「国木田くーん。私の代わりに太宰怒っておいて」
国木田くんはPCから顔をあげようとはしない。
「……」
「無視すんな〜。仕事に集中しすぎー」
「あの、𓏸𓏸さん」
「どうしたの? 敦くん」
敦君は困ったような顔をしている。
「あー。太宰の馬鹿がなんかした?」
「えっと……その……」
「𓏸𓏸、少しいいか?」
敦くんは口を開きかけては閉じてを繰り返していた。急に乱歩さんが医務室から顔を出して手招きをする。
「ごめん敦くん、また後で。太宰、ちゃんと仕事しろよー」
医務室に入るとそこには乱歩さん、与謝野先生、福沢社長がいた。
「どうしたんです?」
「𓏸𓏸。現実を見ろ」
社長は私に向かって言った。
「はい? いや、現実は充分見てますけど……」
「単刀直入に言う。太宰と国木田の死から目を背けるな」
乱歩さんが冷ややかに言った。
「何を言ってるんですか? 太宰だって国木田くんだってそこで仕事してるじゃないですか」
「認めたくない気持ちは分かるよ。でも、死んだのは事実なんだ。夢を見るな」
与謝野先生まで……。
「私は現実を見てます! 彼らが死んだなんて、そんなこと……」
「なら今一度社内を見てみろ」
そう言って社長と私は社員たちの元へ向かった。
「ほら、太宰も国木田くんも生きて……」
あれ? 2人が居ない。
「うーん。仕事にでも行ったのかな」
「𓏸𓏸さん……。」
敦くんが何か言ってる? いや気の所為か。
「にしても2人の机の上が綺麗すぎるな」
「𓏸𓏸、周りの社員を見ろ!」
急に社長が大声で私に言った。
「急になんです……か」
周りの社員は心配と怯えが入り交じったような顔をしていた。
「な、何? その顔」
「虚空に向かって話しているアンタを見てあんな顔になってるんだよ」
後ろに与謝野先生と乱歩さんがいた。
「皆、2人が死んだことを悲しんでいる。それはお前と変わらない。だが、皆はその現実を受け入れている。君だけが夢を見てるんだ」
「乱歩さん? 私は夢なんて……」
「思い返せば、2人の訃報を聞いた時君は誰よりも無反応だった。泣くことも笑うことも怒ることもなく、無だった。君はその時点で2人の死という事象を心の中で封印したんだ」
「2人は死んだんだよ。確かにね」
乱歩さんの最後の一言が決定打になった。
薄々気が付いていた。
2人が居ないこと。もう二度と会えないこと。
けれど、信じたくなくて気が付かない振りをしていた。
「もう……居ない……」
私の呟きは静まり返った社内に寂しく響く。
口に出したことで、それが現実であると実感してしまった。
「……っ……ううっ」
涙が溢れた。2人が死んでから1度も流れたことはなかった涙がとめどなく溢れる。
私は夢から覚めた。
現実は、酷く悲しくて残酷なものだった。
お題:夢と現実
2023 11 06
12/4/2023, 10:09:51 PM