「時よ止まれ、お前はいかにも美しいから」
ファウストが求めた悪魔的な願望だ。神さえも止められない時間の流れに、必死に立ちはだかった彼の姿こそが、儚げで美しいだろうよ。
ただ、その美しさは現代でもう見られない。その言葉を言うのは、大人になれない子どもだけだ。地団駄踏んで、幼い頃、両親に愛情を受けられなかったことに死ぬまで悔やみ憎み狂い、大人になれなかった責任を親に求めて、自ら心の成長の時間だけを止めている。
幼心を抱えた大人の希少性を自慢したいだろうが、やはり時間の流れを止めた者は醜い。時移ろい衰えていく身体と時止めて幼稚にしかならない心は、実に見ていて不愉快だ。
少子化だと言うのに、子どもが増える矛盾した世界で、私は仕方なく大人になるしかないと腹を括った。子供騙しに妖精の羽を背中にしょって、目の覚める針の粉を子どもらにばら撒いてやろう。その針を目に突き刺して、内なる大人を叩き起こせ。さあ、もう新しい朝だぞ。
「時よ流れよ、お前はいかにも美しいから」
(250216 時間よ止まれ)
2/16/2025, 12:51:34 PM