カーテンを開ける。
眩しい朝日と共に、蝉の鳴き声が部屋に染み込んでくる。
久しぶりに日の出ている時間に起きた。
太陽の光が眩しい。
「いつもどうして私だけ…」が口癖だった私を叱ったのは、あなただけだった。
いつもウジウジ後ろばかりを振り返って、人を信頼しすぎて、人をボロボロにして自分もボロボロになって…
今も昔も今までも、ずっと灰色の人生を過ごして、諦めてきた私に、本気でズケズケと言葉を発するのも、あなただけだった。
「不幸と悲劇を影みたいにいつまでも引きずって、下ばかり見て歩く人間を好きな人は碌でもない奴しかいないのよ。だから、とっととその口癖辞めなさいよ。それで私とちょっと出かけましょう?日が出ているうちに楽しいことをして、“私だけ”を蒸発させてしまいましょう!」
そう言って眩しく笑って、あなたは私の手を引いた。
日の中で、あなたが笑って、私の手を引いて、いろいろなところに行って、いろんな話をして…
吐き気が込み上げる。
後悔が喉元までせり上がってくる。
あの頃に戻りたい。
私はなんて事をしてしまったのだろう私は取り返しのつかない事をやっぱり私はダメなのだあなたと一緒に過ごせる出来た人間ではなかった私はあなたに会ってはいけなかった
あなたは私だけには会ってはいけなかった私だけには慈悲なんてかけたらいけなかったんだ!
なんで、なんで私だけが
なんで、あなたが
あなたはもう居ない。
もう会えない。
私が、私が全てめちゃくちゃにしたんだ。
あなたは…あなたは私が…
私が……
…あなたは、
あなたは何処へ行ってしまった。
手に嫌な感触がまだ残っている。
日に当たるとあなたを思い出す。
最期に見たあなたが見開いた眼を。
あなたの怯えの滲んだ弱々しい身体を。
あなたはもう居ない。
何処かに行ってしまったんだ。きっとそう。
私のせいで。
私が握った刃物のせいで。
蝉がうるさく鳴いている。
夏も盛りの日差しが、私を照らす。
吐き気が込み上げる。
ごめんなさい…
目の縁を、生暖かい水滴が流れ落ちていった。
7/18/2024, 12:35:35 PM