緋衣草

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本気の恋  (9.12)


「あいつ、◯◯ちゃんと付き合ってるって知ってた?」
 友達がそう囁いた時、自分でもびっくりするほど無関心な「ふーん」という音が出た。慎重に気をつかって私に伝えたらしい友達はひどく狼狽えた。
「ちょ、いいの?あんたすっごく努力してきたじゃん」
そうだね、と静かに微笑むと幽霊でも見たかのような顔をされた。失敬な。これでも傷ついているというのに。
 くるくると丹念に巻いたポニーテールに触れて、そっかぁとため息をつく。今日は綺麗にできたな、とこんな時に嬉しくなる。
 彼のためだけにストレッチして、日焼け止めを欠かさず塗って、メイクも髪型も練習して。必死にやった勉強なんて最高だった。初めて話しかけられた日は、いつも自転車を降りてしまう坂もぐんぐんすぎてそのまま浮き上がってしまいそうだった。
「大丈夫。本気だったよ、ちゃんと」
 そう笑うとなんだか私より傷ついた顔をして抱きついてくる。あんたはホントに綺麗になったね、と優しく言われて胸が熱くなった。まだ泣けない。今日はメイクもいい感じなのに。


ありがとう。大好きだったよ。

9/12/2023, 12:13:41 PM