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冬になったら


ぼくに命が吹き込まれたとき、ぼくはとっても嬉しかったんだ。だって君の笑顔がこんなにも近くで見れたんだから。
視界いっぱいに広がる君の笑顔は太陽よりも眩しくて、みてみてー、とぼくを自慢する姿がとっても微笑ましかった。
体は冷えきって寒かったけれど、君が触れるところから熱が伝わって、崩れそうになるぼくを君はたくさん補強してくれたね。
でも、日が経つほどに、だんだんとこの形を保つことが難しくなったんだ。そしたら君はいやだ、と大泣きしてぼくと君のママを困らせたんだ。
気休めにしかならないけれど、君はぼくのことを日陰に置いてくれた。
最後の最後まで君はぼくのとなりにいてくれたんだ。
最初は冷たかった体が、心がじんわりとあたたかくなって、溶けて。
だから、ぼくはこう言うんだ。冬になったら、また会いましょう、ってね。
冬が来たらまたぼくを作ってよ。雪が降る日にまた会えるんだから。

11/17/2022, 10:59:28 AM