流されて、眠っていた。
前までは波にもまれて、流されて、浮いたり沈んだりを繰り返していたが、今は奥底に沈んで流れることはあっても、浮かぶことはなくなった。
いつか誰かに届くようにと、海に放り投げ出された僕。
でも、誰に見つかることもなく、ただ静かに海の底にいる今。
たまに魚につつかれることはあれど、未だに人の手には届いていない。
中に入っている手紙は、まだ解読できるものであろうか。
なんの音も聞こえない。もう光も届かない程、海の底の底まで落ちていった。
魚と共に網にひっかかってあがることもないであろう奥底まで沈んでしまったらしい。
放り投げ出した者もきっともう存在していないかもしれない。
でも僕は存在し続けている。役割はもうわからないけれど、海の底で僕はもうしばらく眠っていよう。
【海の底】
1/20/2023, 10:38:04 AM