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七夕…

暗い体育館の床に 並んで座って、他にも沢山人がいて、バタバタ走り回ったりざわざわしていたけれど、隣に二人っきりで座っているような感覚。

人型の影絵が動く劇で、音響担当だった私。

クラスの殆どに台詞を割り当てられ、勿論私も声を録音した。

それのチェックをするために、座っていたら静かに君が横に座ったんだよね。

え…嘘!
どうして隣に座ったの?
誰かに、聞いたのかな…君の事、好きだって…。

良かった…暗くて…顔、真っ赤だもん。

またビックリ!何?!
どうしたの?肩寄せて…
え?歌? 誰かに聞いたのね…きっと。

こんな事、もう二度とないかもしれないと覚悟して、照れずに精一杯、君の耳元で歌ったよね。

長渕剛の『巡恋歌』…好きです好きです心から…
…私の恋はいつも巡り巡って振り出しよ いつまで経っても恋の矢はあなたの胸には刺さらない…。

悲しいかな、好きな君に私の恋心は歌のように伝わらないって宣言したみたいで、歌い切ってから恥ずかしくなって、逃げちゃった。

ちゃんと告白しないで、If you by my side.(あなたがそばにいてくれたら…)と書いたカードを渡して、付き合って欲しいなんて言えなかった。

君は、ちょっと困ったような照れたような顔をしてそっと、何も言わずプレゼントを私に渡したよね。

今となっては、全部、何故?どうして?どういう意味だったの?と聞きたい事が山ほどあり過ぎる。

はっきりとさせなかったから、いい思い出になったのかもしれないね。

七夕が来ると、彦星と織姫がやっと出会える日だな…と思う度に、もう二度と会うことを願っても叶わない君とのあの淡い思い出が蘇る。

もしも…あの時、ちゃんと想いを伝えていたら一年に一度だけでも、君に会うことが出来たのかも…なんて考えるのは、私の自由でいいよね。

星の河を飛び越えて、一年ぶりの積もる話を沢山して楽しく幸せな時間を、彦星と織姫が過ごせますように…

私には、空を見上げて 祈るしか出来ないけれど…



*読んで下さり ありがとうございます*

7/7/2023, 10:57:11 AM