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 幸ちゃんと手を繋いで路地を縫うように歩いた。私は自然と早足になって、幸ちゃんは脚をもつれさせていて、申し訳なかった。
「雪国に行きたいな。」
 幸ちゃんがぽつりと呟いた。言葉の少ない子だから、一言を大切にしたくて、理由を聞いた。
「ここはまだ冬にならんでしょ?だから、さっさと北に行って、雪に会いに行くの。」
 幸ちゃんは「暑い」って、手袋を脱いだ。大きな痣のできた手首が露わになる。腕をまくろうとしていたので、止めた。
「寒けりゃあ、着てられるよ。ね、お姉さん、連れてって。あたし、お金あるよ。」
 幸ちゃんは、小さな手に不釣り合いな長財布を取り出すと、お札の枚数を数え始めた。止めて、財布を預かる。
 お金なら私が出す。お姉さんだから。
 とびきり雪が降っているところに行こう。そうすれば、幸ちゃんは厚い服を着ていてくれるし、私たちの顔も過去も、すべて隠してもらえる。
 ここが冬になる頃には、私たちの逃避行は終わる。それを信じて、改札に切符をくぐらせた。
 

11/17/2024, 7:13:40 PM