名前は、親から子への最初のギフトなのだと言う。であれば僕は、生まれながら呪われたようだと、自分の名前を見る度に思う。
不実と不安の代名詞。それがいつまでもついて回る。大嫌いだ。
「ねぇ、そっち晴れてる?」
「うん」
電話越しに、君の声。こもった音で嫌いだという君の声が、僕は何よりも優しく聞こえて好きだ。口下手で相変わらず相槌ばかりの僕に、君はいつも優しく語り掛ける。
「月見える?」
「え。あぁ、あった」
促されるように仰いだ空から、ひとつの光を探し出す。それはいつもと変わらず、ただ静かに、不安定な姿を晒していた。
「もう少しで満月かな」
「欠け始めたとこかも」
「月が見えると、君を思い出す」
「そう」
「空にいつもあるから、離れててもいつも一緒みたい」
「そうかな」
「でもやっぱり会いたいね」
「うん」
誰かと時間を共有することも、大切に思うことも、全部君が教えてくれた。君を見ていると、どんどん僕の世界は新しくなる。
大嫌いな名前も、ほんの少し好きになれそうで、どこか少し落ち着かない気持ちになった。
〉空を見上げて心に浮かんだこと
7/17/2022, 1:33:43 AM