[春爛漫]
「そろそろかなあ」
月を見上げてポツリとつぶやいた少年は、腰掛けていた木の枝から飛び降りた。
着地の足音は、足元から舞い上がった桜の花弁でかき消される。
目も開けられないほどの桜吹雪と、一陣の風が吹き過ぎて。
静寂が戻ったそこには。
暗い空をほんのり照らすほどの花々と。
月明かりにも負けない満開の桜の大樹。
「よし。これで今年も春がきた」
満足そうに頷いた少年に答えるように。
まだ少しだけ冷たい風が、髪についていた花弁を掬っていった。
4/10/2023, 11:24:03 AM