『誰もいない教室。』
晴天の真夏日、窓から差し込む陽光。
忘れ物をとりに来た私は放課後、教室にいた。
部活動に励む声。
クーラーのきいた教室でグラウンドを眺め、
こんな暑い中良く頑張ってんなぁ、なんて考える。
サッカー部、陸上部、野球部、テニス部…
あ、そういえば
"あいつ"
ってテニス部だっけ。
1人の友人の顔が浮かんだ。
…どうせなら部活中のあいつを拝んでやろう。
そう思い、テニス部の集まりをじっと見つめる。
すると…
ガランッ!
と勢い良くドアを開ける音が響き、
驚いた私は咄嗟に音の方へ顔を向けた。
「!何でいんのー?」
テニスラケットとボールが描かれたTシャツ。
そう。
私1人の教室に入ってきた犯人は"あいつ"だった。
そんなあいつの言葉に「そっちこそ。」と返すと
「忘れ物〜。」
と間延びした声が返ってくる。
何だ、私と一緒じゃん。
窓側の席の1番前。
あいつはそこまで歩いて、ボトルを手に取り
体の向きを変えた
かと思うと、急に足を止めて、こう言った。
「ね、一緒帰ろ!待ってて!」
そう言って私に背を向け、私の返事も聞かずに
足早に駆けて行くあいつ。
待っててって…部活終わるまで待てってこと?
後何時間あると思ってんだよ…。
半ば呆れつつ、再び1人となった教室を少し歩く。
窓側の席の1番前。
そこに足を崩して座った。
揺れるカーテン、少し柔い風。
テニス部から先程までは聞こえなかった
張りの良い高い声。
「絶対アイス奢らす…。」
1人誰もいない教室でそう呟き、
ラケットを振るう"あいつ"を眺めて
私は待つのだった。
9/6/2025, 11:46:34 AM