白樺

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僕が住む街は東北の海沿いにある港町だ。夜は街灯がなく、星が空からこぼれそうなほど輝いている。
コンビニに行くにも車がいるこの街で唯一の自慢である。いつも、夜10時過ぎになると、父に星を見に行こうとねだったものだ。

そんなある日、街から通達が来た。『観光地にするために、この辺に街灯を増やします。』
僕は衝撃で動けなくなった。僕にとっては、星が僕の唯一自慢であって、それ以外はなかった。

けれど、僕の思いも虚しく工事が始まり、街灯が作られた。僕はそれから、星を見たことはない。

「1回星を見に行かないか?」父が言った。
「星なんかないじゃん。つまんないよ」
でも父は大丈夫と言って、僕たちが星を見たあの場所まで僕を連れてきた。

「やっぱり星なんか見えないじゃん。」
「確かに、そうだね。でもさ、僕たちには見えないだけで、星空はこの上にあるんだ。街灯だってさ大きな星が僕たちの下に降りてきてくれたと思えばいいんじゃないか?それならここは今も変わらず満天の星空が見えるだろ?」

4/5/2024, 10:50:40 PM