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時を繋ぐ糸(オリジナル)(異世界ファンタジー)

宿の部屋で一人頬杖をつきながら、ラッツはぼんやり考えていた。
昔の仲間が亡くなって10年。旅の仲間はもう作らないと自分に誓って、確かにこれまで誰とも一緒に旅をしてこなかった。
それがどうだ。
少し前に滞在した城塞国家で、監視という名目でついてくる事になった男がいる。
実は国の秘密を知ってしまった彼を追放する意味での厄介払いだったんじゃないかと思っているのだが、クソ真面目な彼は王を信じてひたすらついてくる。
そしてもうひとり。
この旅が始まるきっかけの出来事のすぐ後に偶然出会い、互いに少し助け合っただけの獣人がいる。
旅の目的はお互い違うのだが、情報収集が必要なことと、向かう方角が一致していた。
互いに異なる村や町を訪れ、その次の街で合流し、情報交換すれば効率的だ、という話になり、数ヶ月おきに先々の街で合流しているのだが。
これが案外楽しかったりするのだ。

どちらかの目的が達成されれば終わり。
どちらかの進路が変更になる情報が出れば終わり。
どちらかがペースを大幅に変えてしまえば終わり。
どちらかが命を落とせば終わり。
ただの口約束なので、いつでもやめられる。

互いに目的達成が最優先であり、このままの時間が続けば良いなどとは微塵も思っていない。
しかし、この見えない何かで繋がっているという感覚が、なんとなく心地よい。

未来の事はわからないけれど、細々とでも続いていくと楽しそうだな、などと夢想するラッツであった。

11/26/2025, 1:22:17 PM