「焼き芋どうぞ」
「なんで?」
彼女から差し出された焼き芋はほくほくと白い湯気を発している。口に含むと甘みが広がって思わず顔が緩んだ。
「ちゃんと休ませたから甘いですよ」
「芋にも熟成って概念あるんだ……」
ほほー、と感心はしたが、そうじゃない。なんで彼女は俺に芋を渡してきたんだ。いや、美味しいけど。
「焚き火をしたんです」
彼女は見透かしてきたように呟く。
「で、あなたと食べたいなって、火を見ながら思ったんです」
えへへ、と笑う彼女の頬は赤く、紅葉のようで。
俺の顔はきっと、カラスウリのように真っ赤になっていたと思う。
【秋恋】
10/10/2025, 9:03:04 AM