目を閉じて、殻に籠もって、現実の嫌な事から目を背け、自身の精神安定に全力を注ぐ。
体力も、供給の為の栄養剤も持ち得ず、全てを捨て去る覚悟も出来ず此処に留まり続けて、ただ、心だけ、逃避行。
体躯だけはいつも在るのに、幽体離脱の如く、中身だけがすうっと抜けていくように、肉体のみ淋しげに取り残される。
周りからの干渉も受ける事無く、騒がしい場所を孤独に過ごして、一日一日が鬱屈で、空虚で、一体何の意味があるか分からず、生きているから生きている。そんな馬鹿げた事を真顔で、いとも真剣にやり過ごして、己の首を絞める真似だけをして、あなたは縄の結び方も知らないでしょう。
否定の言葉を遮りたいのであれば、前に進むか後ろに下がるかしなくてはなりませんが。それとも圧倒的な防御力が、あなたにあるとお思いですか。いいえ。そうではありません。
心だけ、逃避行。そうやって自己防衛したつもりでも、害を成す相手には1ダメージも与えられないのです。そうしてまた咳き込むのです。呼吸も出来ずに苦しむのです。
そんなあなたの姿も、かみさまは見ているのでしょうか。そうでないで欲しいのは、傲慢でしょうか。
十作目「心だけ、逃避行」
自己嫌悪に塗れた気高く醜い人間の自白のようなものでした。最近の曖昧は詩や純文学、自由律に手を伸ばしつつある。たのしいです。
7/11/2025, 2:11:35 PM