与太ガラス

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 暦は空気を読むことなく、時とともに進んでいく。まだ夏の空気を漂わせたまま、九月も終わりに近づいていた。今日は少し涼しく感じるが、昼には30℃に近くなるらしい。電車に揺られながら目をさまよわせていたら、トレインビジョンの天気予報を見てしまっていた。

 暦にならって画面には栗や紅葉のイラストがあしらわれているが、果たしてもう栗は採れるのだろうか。

 天気予報の画面が、いつの間にかTシャツ予報に変わっていて、埼玉のTシャツが弓道の的にされているのを見て、洗濯をかけて家を出たことを思い出した。

 私は体をくねらせてバッグに手をつっこみ、リングの感触を認めると輪の中に中指を挿して引き上げた。顔認証のタイムラグを待ちながら、毎回指紋認証の復活を祈る時間は、この世で最も無駄な儀式のひとつだろう。

 LINEを開き、もう起きただろうかと思いつつ同居人にメッセージを打った。10秒待ったが既読にはならない。

 駅に着くと人の流れに巻き込まれながら電車から吐き出される。毎度のことだが、いっそ足を浮かせてやろうかと思うくらい圧を感じる。

 車両の形をした容器に粘性のあるゼリー状の物質を流し込んで、握りつぶすようにぎゅうううっとしたら、出入り口からゼリーがびゅるびゅるるるぅって出てくるような、そんなゼリーの中に私はいる。

 よし、今日はゼリーを買って帰ろう。

 そう決意して、駅の階段を上っていった。

 

9/27/2024, 12:58:57 AM