しるべにねがうは

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おわらないものがたり

冗談じゃねぇ、と思う。
終われよ物語なんだから。
めでたしめでたしでいいだろ。
俺たちの戦いは永遠に続く、だなんてそんなのは。

そんなのは、酷いじゃないか。

「ねぇ尾上君、大学生って何するんですか?」
「……サークル活動、飲み会、あと何…しらん…まだ高校生だし俺…」
「言い方を変えます、尾上君、大学生になったら何したいですか」
「まず入学式で爆睡だろ、そんで隣に座った奴と友達になりたい、どの講義取るってぐだぐだ言いたい、あとゲームわかる奴と友達になって放課後マックでだらだらしたい、成人したら酒を飲みたい」
「勉強は?」
「するわ!!いや勉強は1人でも出来ないことないだろ、まぁ限界はあるけどさ……あの大学じゃねぇといない先生とか講義とかあるし。でも同年代と同じ場所に通うって久しぶりだし俺の大学生のイメージがそんな感じってのもある」
「まぁ私も大学行ったこと無いのでその辺りわかりませんけど」
「高校生の考える・知ってる大学ってそんなもんだよな」
「でも楽しそうですわね、よいことです」
「入学前からネガはねーな」
「うふふ」

入学前、大学合格後に出された課題に四苦八苦してる俺といつもの通り護衛のお嬢。あと2ヶ月で俺は柳谷邸を出る。
笹本さんから家事を教わり、石蕗さんには物件選びを手伝ってもらい、お嬢から対怪異妖あれそれを、蛸嶋君から家具家電の選び方やなんかを教わっていたあの頃。
出会った当初と思えばオバケとの遭遇率がかなり低かった。
体質がマシになったのかと思っていたが多分そんな事はなく。
あれは裏でたくさんの人が頑張ってくれていて、あと俺もちょっとした事なら自分で対応できるようになったから騒がなくなったんだと思う。
穏やかな日々だった。
俺がテキストを進める傍らで編み物に精を出すお嬢、時折挟まれる雑談。あと2ヶ月で失われると知っていたけれど、最初から知っていた別れはさほど寂しく無い。

「大学、楽しみですわね」
「お嬢は大学どこ行くの?」
「私進学しませんよ」
「……マジで!?」
「色々事情がありまして。このまま陰陽師に就職ですし」
「陰陽師には大学ない的な…」
「宗教的な大学はありますが、まぁ私達所属してる所が所ですからね…一般的な大学にはいきませんわね」
「最終学歴高校!?」
「陰陽師就職には支障ありませんから」
「あぁまあそっか…そうだよな」
「これからも、尾上君達が平和な生活を送るのをお手伝いしますわよ、まぁ日の目は見ませんけれど」
「そりゃ心強い」
「そう言ってくださって何よりです」

それから新居に入るまで柳家邸に世話になって。
大学入って会わなくなって。
一緒に入学した五月君もそこまで見なくなって。
大学卒業して。
入社した所がわりかしやべぇとこで。

今もきっと、この闇夜にかける星のように。
人知れず人を助ける人々がいるのだと。
最初から道は分かれていた。
そっちは俺の道じゃなかった。
もう何も知る事はできないけど、
どうか穏やかな日があればと願うよ。

1/26/2025, 12:51:34 AM