maria

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「入道雲」

安穏とした淀んだこの日常に
ムクムクと静かに 静かに
大きく頭上に拡がった雲は
私の影を奪い
木々の影を奪う。

違和感を感じる間もなく
頬に宣戦布告の水の第一矢が放たれる。

見上げれば既に入道雲は
色濃くしてその目で私を捉え
やがて、息もできぬほどの
豪雨で清めようとする。

神からの賜り物を
避けるなど 
もったいなくて
私は両の手で盃を作り
神からの酒坏を受けた。

こうやって この夏
私は少しずつ
清められてゆく。


          「入道雲」





6/29/2023, 11:01:52 AM