私には彼氏さんがいる。
とても優しくて安心感があって頼りになる私にはもったいないくらいの人。
でも、私はもう少しで命が尽きる。
「世界に優しくあろうとする人の方が早く死んじゃうなんて、おかしな話だよね。」
1人ぼっちの病室で私は窓の外から見える夕日に向かって、ぼそっと言葉をこぼす。
誰にも届かないそれは、目に見えることもなく儚く消えていく。
言葉なんてものは本当に大したことないよなあ。
だって、皆が恋人に言う愛の言葉だっていつかは忘れてしまうのでしょう?
「ほんっと寂しい世界ね。」
コンコンッ
急に、扉がノックされる。
「やっほ、今日も体調の方はどうかな?」
「あら、貴方が思っている以上にとても元気よ。」
「そっか、、、無理はしないでね。」
へへっと不細工に笑う優留(すぐる)。
この人が私の自慢の彼氏さんだ。
「お花の水変えておくね。」
「ありがとう。」
こうして学校が終わってから、私の身の回りのお世話を毎日欠かさずしてくれている。
そんな優留に私はどうしても伝えなきゃならないことがある。
「ねえ、優留。」
「ん〜?なあに、花夏(かな)。」
優留は綺麗な水になった事を喜ぶ花たちをそっと棚において、ベッド横の椅子に座る。
「私ね、明日にはもう優留と会えなくなると思う。」
ガタッ!!!
優留は椅子から勢いよく立ち上がる。
「それは、つまり、、?」
「自分のことだから分かるの。もう明日の夕日は見れない。」
私は涙が出ないように、左手を思い切り握りしめる。
「嫌だ。」
優留は、駄々をこねる子どものように言う。
「嫌だよ、まだ時間はあるでしょ。つくれるでしょ。一緒に頑張ろうよ。一緒に乗り越えようよ。花夏が喜ぶなら、僕学校やめるよ?やめてずっとここで暮らそうよ。ねえ。」
私は右手も思い切り握りしめる。
「ごめんね、私もう頑張れそうにないや。」
「私だって、もっと優留と色んな所行きたかったよ?約束してた事まだまだたくさん残ってる。もっと思い出つくりたい。」
「だったら!!!!」
「優留、聞いて。」
私は興奮状態の優留の両手を、ぎゅっと優しく握る。
「私が死んだら私のことは忘れて、次の人と幸せになって欲しい。優留は、優留にはまだまだ未来があるの。優留を待ってる人が沢山いる。私なんかに時間とられちゃ駄目。時間は命と同じだから。ね?お願い」
優留は涙の溢れる目で私をじっと見つめると、静かにうなずく。
「本当は嫌だけど。本当は花夏だけがいいけど。花夏が言うなら。」
優留は鼻水まで垂らして私に気持ちを伝えてくれる。
「花夏、愛してるよ。」
「へへ、私も優留の事愛してる!」
年がたって、優留は私の言った次の子と結婚した。
「愛してるよ、沙也加(さやか)。」
、、、、、、。
ほんと、寂しい世界。
心配で幽霊になってまでそばにいたけど、もういっかな。
「優留、愛してるよ、さようなら。」
ハッピーエンド そら
3/29/2023, 10:42:51 AM