うどん巫女

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つまらないことでも(2023.8.4)

帰り道、友人の後ろ姿を見かけて声をかけようとして、その隣に人影を見つけて、口にしかけた言葉が空気に溶けた。
別に声をかけたってあの子は気にしないだろうし、込み入った話をしているなら邪魔しないように軽く挨拶をして通り過ぎればいいだけだ。あの子は、そういう子だ。わかっているけれど、なぜだか私は、息を潜めて、前を行く二つの人影が見えなくなるまで俯いていた。
次の日、昨日のことをあの子に話したら、「え、声かけてくれたらよかったのに」って。やっぱり、そんなに気にすることじゃなかった。
そんなことはわかってた、わかってたけど、私の隣にいない君は、なんだか私の知らない君みたいで。
「なんて声かけていいかわかんなくてさ、つまんないことしか言えなさそうだし?」なんておどけてみせた私に、「つまらないことでもいいじゃん、一緒に帰れたらよかったのに」って言う君。
そうなんだけど、そうじゃないんだ。きっとこれは子どもっぽい気持ちで、無理に名づけるとしたら「嫉妬」や「独占欲」なのかもしれない。
ただ、私以外の人に笑いかけないで、なんて、言えるわけがないから。
だから私は今日も、わざとらしい笑みを貼り付けて、君の友達という道化になるんだ。そうすればするほど、君に相応しくない私になるのに。

8/5/2023, 9:17:00 AM