喜村

Open App

 明日なんてこなければいいのに。
隣ですやすや眠っている彼女を見て、俺は思った。
明日になれば、彼女は家へと帰ってしまう。
 長く伸びた前髪を掻き分けて、可愛い寝顔を拝ませてもらった。

 昨日はいろんな所にデートに行ったね。
やっぱり、動物園からの映画館のレイトショーはハードだったね。
でも、予定を詰め込まなければいけない理由がある。
 遠距離恋愛なのだ。だから、会っている今日にたくさんの予定を詰め込まなければならなかった。

 彼女は楽しくすごせただろうか。
今日が昨日になって、明日が今日になった。
まだ今日は始まったばかりなので、今すぐ帰る訳ではないけれど。
「もっと一緒にいたいなぁ……」
 ぽつりと呟く。
「次はいつ会えるかな」
 いつもは強気の俺だが、今日はやけに弱気になっていた。
 楽しかった昨日へのさよなら、新しい日との出会い。でも、明日がずっと続けば、また彼女とデートできる。
 ずーっと見ていたいけれど、俺も目を閉じた。



【昨日へのさよなら、明日との出会い】

5/22/2023, 10:08:26 AM