『遠い鐘の音』
霜が降りそうなほどに冷たい指先に、はぁと息を吹きかける。指先に詰まった氷の粒が溶けていくように楽になる。今の時刻は十三時七分。待ち合わせの時間は十二時だったのに。三十分は音楽を聴きながらぼーっと待っていた。流石に三十分を過ぎると電話をかけた。五回くらいかけた。出なかった。腹が立つ。四十分ほど過ぎると、周りの人間が憎らしくなってくる。友達と、恋人と、家族と…一人で歩いてる人にはどうとも思わなかった。でも、ぼーっとするのはきつくなってきて、鞄の中を漁ったら先週くらいに読み終えた小説が隅っこに隠れていた。読みごたえなんてなかったけど、ぼーっとしてるより、まぁいくらかマシだった。そして今、一時間が過ぎても、なんの連絡もなく、既読もつかない。これはきっと死んでいるか、ブロックされているか、としか考えられない。ブロックされてた場合、僕がここにいた時間は誰の為なのだろうか。自分のために使った記憶など更々無い。せめて神様に1000円くらい貰ってもいいんじゃないだろうか。バイトよりは辛くなかったけど、それなりに苦痛だった。
ああ、どうせなら早く五時になってほしい。五時のチャイムが鳴ったら帰ろう。それまで何をしようか、ネットサーフィンはさっき数分で終えてしまったし、この小説は面白みがないし、いっそのこと寝てしまおうか。いや、それは公共のマナー的に良くないか。はぁ、五時のチャイムが遠い…
12/13/2025, 1:38:17 PM