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あの日の私,どうかしてた。
あの日の私,心に余裕なかったの
あの日の私,頭がいっぱいになって話しちゃったの。
あの日の私,少しのイライラも許せないくらい
余裕がなかったから。

「ねぇ,いい加減にしてよ!!
何回言ったらわかってくれるの?私と別れて!!」

私たちはあの日,あの言葉で,はなればなれになった。
勢いで伝えた言葉
彼はどんな気持ちで聞いて
別れたかなんて私は知らなかった。


あれから数年たった今日。
彼との共通の友達から連絡が来た。

「ねぇ,あんたの彼氏大丈夫なの?」

「何が?」

何かさっぱり分からない私はそう返すしか無かった。

「何がって冗談で言ってるの?」

「は?どういう事?」
冗談って何?わけがわからない。

「あんたの彼氏...もう長くないんでしょ?」

「はっ?」
もう長くない?どういう事?死ぬって意味?

「それって死ぬってこと?」

「うん,そう聞いたよ。
辛いと思うけど最後まで彼と一緒にいてあげて」

言えない...。もうとっくに別れてるってこと。

「あぁ,うん。じゃあ,また」
そう言って私は電話を切った。


あれから私は,彼に連絡を取って話をすることにした。

彼は病室のベッドにいた。

「あ,久しぶり」
数年ぶりの彼の声は以前と変わらず
優しい声をしていて涙が出そうだった。

「...久しぶり。」

「俺,肺がんになったみたいなんだよね。も
う長くないらしい。
タバコの吸いすぎかなぁ笑」

「...タバコ?」
私と付き合ってた時は吸ってなかったよね?

「そう,君と別れてなんだか全部が嫌になって
吸うようになったんだよね。」

「そうなんだ...。ごめんなさい。
あの日のこと。一方的に別れを告げて。」

「あぁ,もういいよ。その代わりに一緒にいて欲しい。
もう長くないらしいからさ。
後悔したくないじゃん。」

彼の近くにいることを彼が望んでいるなら
そうしたいと思った。


一緒に空を見上げている時

一緒にテレビを見ている時

一緒に笑いあっている時

私,どんな彼も好きだなぁと思った。


数日後彼の体調が急変した。

「俺,今も好きだよ。君のこと。」

優しい目で私を見る彼。
苦しいはずなのに
そんな言葉言わないでよ...。

「そんなの...私も同じ気持ちだよ。」

そんなことを言うと彼は笑って目を閉じた。
もう二度と目を覚ますことはない彼を見て
涙は止まらなかった。

はなればなれしたことを
後悔したのは大切な人を失った時





─────『はなればなれ』

11/17/2022, 8:40:47 AM