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▶80.「ただひとりの君へ」
79.「手のひらの宇宙」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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旧首都までは残り1日から2日で着く距離であったが、
その道中に大きな変化があった。

「随分大きい街だな」
「人間モ多イネ、声ガ沢山」

ランクも様々な宿屋が多く建ち並び、客の入りも多いようで賑わっている。

「乗合馬車も比較的多い。ここから、どこかに向かうようだな」

物の値段も、今まで見てきたより高く設定されている。

「観光か?」

そのまま街を通り過ぎる。
‪✕‬‪✕‬‪✕‬と同じく歩いていく人も多い。
しかし荷物は小さい。目的地は遠くないようだ。

「旧首都に何か関係があるかもしれない」

ぽつり、ぽつりと宿屋が点在している。
人形も夜は宿に泊まった。

翌日、引き続き旧首都に向かって歩く。
何台もの馬車が追い抜いていく。

「ア、」
「どうした」
「濃度ガ高クナッテキタ」
「危険か?そういえば家屋を見なくなったな。そして、向こうに何かある。距離的に旧首都と思われるが」
「ンー、僕ハ、嫌カモ」

一度森まで引き返し、ナナホシはそこで待機することになった。
「長くても3日だ。この樹から離れないように」
「‪✕‬‪✕‬‪✕‬モ、気ヲツケテ」
「ああ」

人形だけで旧首都へ向かうと、
そこはもう、人の住む場所ではなかった。

地面はあちこち隆起していて、人間が通る分だけ道が整えられている。
その先では岩がいくつも突き出し、隙間から煙だか湯気だか分からないものが噴き出している。
その周りは、広い池になっているようだがほとんどが湯気で覆われている。時折風に吹かれて見える程度だ。安易に近づくことはできない。

ただ、観光目的の人間も多い。
ひっきりなしに馬車が留場を出入りしている。

人形は、物売りから卵を買いつつ、話を聞いてみた。

「道行く人につられて来たのだが、すごいなここは」
「お客さん、初めてですかぁ。すごいでしょう、サボウム国イチの観光名所ですよ」
「ここは、昔からあるのか?」

「戦乱より後だと聞いていますよ。なんでも突然ボカンと出来たとか」
「それは巻き込まれた人もいただろうな」
「いや、それが新首都を作るのに大勢人手が必要だからって、みんな連れてっちまってたらしくてねぇ。城はダメになっちまったが人は案外大丈夫だったっつう話ですよ」
「そうだったのか、聞かせてくれてありがとう。これは取っておいてくれ」
「毎度ありぃ!兄ちゃん、良い旅を!あー、卵〜温泉卵はいらんかえ〜」

「ふむ、これ以上は首都に行くしかなさそうだな。森まで戻るか」

森に入ると、すぐにナナホシが文字通り飛んできた。
人形が手を差し伸べると、そこに降り立った。

「‪✕‬‪✕‬‪✕‬、ブジ?」
「体は見ての通りだ。ナナホシも無事そうだが大事なかったか?」
「ウン」
ぴょんぴょん跳ねて無事をアピールしている。

「良かった。それでだが」
人形が旧首都のことを話すと、ナナホシも同意見だった。

「何カ分カル、イイ」
「そうだな。その後だが、新首都に行くと、イレフスト国がかなり近くなる。北上してナナホシの活動に必要な、あの柑橘を」
「みかん」
「そう、いや、やはり上手く聞き取れないが、それを取りに行くのはどうだろう」
「イイノ?マダ時間アルヨ?」
「ああ、情報を集める必要もある。できるだけ早く行った方がいいだろう。ナナホシは、ナナホシしか居ないのだから。ただひとりの君への支援は当然の事だ」
「アリガトウ」
「決まりだな。またここで一晩休んでから出発しよう。イレフストからの帰りは、あの地下通路を使えるといいがな」

1/20/2025, 8:53:45 AM