sibakoのおさんぽ🐾

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お題【太陽のような】

私は吹奏楽部でバスクラリネット(バスクラ)というクラリネットの低音域の楽器を吹いている。しかし、ずっと裏方で、低音に飽きてしまった。

「メロディ吹きたーい!!」

私が嘆くと同じく低音楽器のバリトンサックス(バリサク)の紗英が「わかるー」と同意した。

「次の曲、ソプラノ(ソプラノサックス)にはソロあるし、アルトにはカッコいいメロディあるのに私たちは裏で“きざみ&のばし“だよ!? 理不尽だぁー」

どうやら私だけの悩みではなかったらしい。
すると、紗英の声が大きかったのか、彩芽先輩が「なになに、どうしたの? 私も混ぜてー」と自分のチューバを担いで、えっさほいさとやってきた。もちろんチューバは低音楽器だ。

「高音楽器がずるいって話してたんです。なんだか低音って、地面って感じじゃないですか。ずっと上の生き物支えるの疲れったっていうか、飽きたっていうか...... だって、他のサックスカッコいいところだらけですよ!?」

紗英が熱弁する。生き物というのが、アルトやソプラノのような高音楽器のことなのだろう。全くその通りだ。彩芽先輩も、同意してくれるだろうと思っていた。しかし、先輩は首を傾げ、話し出した。「もちろん、基本低音楽器は地面で支えなんだけど......」

「私はね、低音って『太陽のように』なれたらなって思うんだよね。周りを照らして包み込む太陽。時には裏から星々を輝かせ、時には蝶々にスポットライトを当てる。バリサクもバスクラもチューバもユーフォ(ユーフォニアム)も...みーんなで力強い太陽。なくてはならない、というより一番大切なポジション!!」

彩芽先輩は「ね? 低音も悪くないでしょ?」と笑った。


そっか、『太陽』か......


私も紗英も自分の楽器が少し好きになった。

いつか、揺るぎない太陽に。
やる気を無くしていた私に一つ目標ができた。

2/22/2023, 1:07:53 PM