初音くろ

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今日のテーマ
《明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。》





もしも明日世界がなくなるとしたら、人は一体何を願うのだろう?

現実には、世界は明日も明後日もなくならないだろう。
けれど、事故や災害などの予期せぬ事態に巻き込まれて呆気なくボクの生が終わってしまうことはあるかもしれない。
そうなったとしても、せめて死んでも死にきれないというような悔いは残さずに逝きたい。

「で、あんたの悔いになりそうなのがこれなわけ?」

ジト目で問う幼なじみに、ボクは苦笑してみせた。
目の前には皿にたっぷり盛られた色とりどりのケーキの山。
ケーキバイキングとしては珍しくもない光景だろう。
近くの席にも同じようにケーキを山盛りにしている人は少なくない。

「食べたいものを食べたいだけ食べれるなんて最高の贅沢だと思うけど」
「それは否定しないけど、それにしたって盛りすぎじゃない?」
「そうかな? このくらい余裕でしょ、お互いに」
「……それは否定しないけど」

贅沢なのはケーキだけじゃない。
大好きな人と一緒に味わうからこそ美味しさが増すというもので。
これなら、世界が明日なくなっても、あるいはボクの人生が終わってしまったとしても、きっと悔いは少ないに違いない。
胸に秘めた長い片恋が叶ったわけじゃないから、一切の悔いがないとは言い切れないけど。

もしも明日世界がなくなって、ボクも君もすべての人が死んでしまうとするなら。
ボクが願うのは、最後のひとときまで大事な人と過ごす時間。
想いが成就しなくてもいい。
最後の瞬間に目にするのは、大好きな君の顔がいい。
それが叶わないのなら、せめて君の笑顔を胸に旅立ちたい。
たとえば、そう――好物のケーキを頬張って、幸せそうに笑う今の君の笑顔とか。




5/6/2023, 2:43:23 PM