人にはご縁があってね。ご縁がある間は関係が続くもの。ご縁が無くなると、それまで毎日のように会っていてもパタリと連絡がなくなったりするものよ。
それが先生の口癖だった。
物心がつく前から習っていたバイオリンは、母が好きで子供に習わせるというよくあるパターンで始めたものだった。
長い年月の間には「辞めます」といったことも数回あったが、母と先生に諭されて趣味として大人になるまで続けてきたから、僕には合っていたのだろう。
ただ、ここ数年は仕事が忙しくて練習を休むことも多くなっていた。
頑張れば通えるけど、日々の疲れに負けた。
いつでも復帰できるという過信もあった。
そんな中で先生から電話があった。
入院して手術することになり、年齢的にも教室を続けるのが難しくなってきたのでこの機会に閉める、という連絡だった。
続けたい生徒には先生の教え子が開いてる教室を紹介します。と言っていただいたけれど、他の先生に師事するのも違和感があってお断りした。
それ以来、バイオリンにはほとんど触れていない。何となく手に取る気分にならない。
今でも家に遊びに行くことはあるから先生とのご縁は続いているけど、バイオリンとの縁は切れてしまったのかもしれないな。
ふと、そう思った。
#突然の別れ
5/19/2024, 2:09:08 PM