【大空】
どこまでも遠く広がる大空を眺める。この空はきっと、君の元まで繋がっている。
旅立ちの前日に君から贈られたストールに、口元を埋めた。別に君のことが嫌いだったわけじゃない。それでもあの狭苦しい村では、私は思うように息ができなかった。夫を立てる良き妻となれと強要してくる両親も、閉鎖的で古臭い慣習ばかりに縛られた村の空気も、何もかもに耐えられなくて、真冬の寝台列車に一人で飛び乗った。
君は今でも、雪に覆われたあの村にいるのだろうか。親の決めた許嫁として、私を大切にしてくれていた君は今ごろ、誰か好きな人を見つけて添い遂げているのだろうか。そうであってくれれば良いと願う。こんな跳ねっ返りな娘のことなんて忘れて、幸せになっていてくれれば良いと。
吐き出した真っ白い息が、遥か高い大空へと吸い込まれていった。
12/22/2023, 8:08:09 AM